変形性股関節症について、ふらふらとネットを漁っていた時に見つけた論文。
内容としては、変形性股関節症に対して運動療法で歩き方のバランスを整え、保存的に症状の改善を図るというもの。結果は症状の改善はみられたものの、統計学的には残念ながら有効とはいえない、ということでした。
が、気になったのはその中で紹介されていた中殿筋のトレーニング法。
中殿筋トレーニング. 遠心性収縮運動を行うことにより, 選択的に中殿筋への負荷をかける様に配慮する.
変形性股関節症に対する歩行バランス法を用いた保存的治療
- 横向きに寝て、
- 上側の脚は地面と水平に。
- 上側の脚のかかとを、
- 出来るだけ遠くにぐぐっと置きにいく。
と、いうトレーニングです。
このトレーニング法、めちゃくちゃ良いのでは・・?
中殿筋の作用
中殿筋はおしりの外側のあたりにある筋肉で、働きとしては脚を横に開いたり、片足立ちをした時に骨盤を地面と水平に保ったりします。
歩く、という動作は言い換えれば左右の片足立ちの繰り返しなので、割と日頃からお世話になっている筋肉です。
野球やゴルフのスウィングの時に、上半身の回転を効率よくボールに伝えるために下半身を安定させる、よく「壁を作る」と言われる動きにもこの筋肉が関わっています。
中殿筋トレーニングの方法
さて、そんな中殿筋。
腰痛や股関節痛の改善のため、またはスポーツのパフォーマンス向上のために強化した方がいい場合は筋トレをします。その時によく行われるトレーニングがこんなやつ。
横向きに寝て足を上に持ち上げる、ヒップアブダクションというトレーニングです。
中殿筋は足を横に開く働きをするので、足自体の重さで負荷をかけてトレーニングしよう、というものですね。
ですがこのトレーニング、ちゃんと負荷をかけるのは結構難しかったりします。
というのも、身体や爪先の向きをちょこっと変えるだけで大殿筋などのもっとパワフルな筋肉で動きを代償できてしまうから。
もちろん身体や爪先を1番キツい角度でキープできれば、このトレーニングで中殿筋をガシガシ鍛えられます。が、運動に対してモチベーションの高いアスリートならともかく、腰痛や股関節痛を改善したい普通の人には1番キツい角度をキープし続けるのはなかなかに難しい。
水は低きに流れ、人は易きに流れるものです。そんなもんです。
で、そこで冒頭のトレーニング法。
この方法の素晴らしいところは、中殿筋以外の筋肉ではこの動きは構造的にできないところです。
多少身体や爪先の向きを変えても他の筋肉では動きを代償できません。
強いて言うなら足を遠くへ置く、という動きを爪先でやればふくらはぎの筋肉で代償できますが、かかとを意識すればその動きは出ないでしょう。
トレーニングを指導する場合も良いですね。
相手のかかとに手を添えた状態で「私の手を」「蹴ってね」と、2文節で伝えられるのでどう動けば良いのかをシンプルに伝えられます。
これが「真っ直ぐに」「一番キツい角度で」「身体を捻らずに」などがつくととたんに伝わりにくくなってしまいます。
このトレーニングに問題があるとすれば、若干の腰部の側屈を伴うので腹斜筋なども一緒に発火してしまうことでしょうか。
あまりないケースだと思いますが腰部の筋肉は鍛えたくない場合は使えないかもしれまん。
あまり大きな動きの運動ではないので高い負荷をかけたい人には不向きですが、腰痛や股関節痛の改善のために中殿筋を鍛えたい方には、
- 間違った動きになりにくいこと
- 一人でも簡単にできること
これらの理由からとても勧められるトレーニング方法だと思います。
高い負荷をかけたければかかとを壁などしっかりした場所につけて、両肩を誰かに抑えてもらえればこの方法でもしっかりトレーニングになるので、アスリートの中殿筋強化を目的とする場合は試してみても良いかもしれません。