最近よく聞く検査の”感度”って何?できるだけ分かりやすく解説してみる。

PCR検査の感度という言葉、近ごろよくニュースなどで聞かれているかと思います。
%で表されることから検査の正確さを表していそうな雰囲気ですが、感度ってなんなのでしょうか。

医療検査の感度と特異度

接骨院や整形外科に行ったことがある方はあちこち曲げられたり、押されたり、叩かれたりして靭帯痛めてるね、とか骨は大丈夫だね、などと言われたことがあると思います。
この叩いたり曲げたりするのが整形外科的テスト、またはスペシャルテストと言われるもので、これで今のケガがどこをどう痛めているのかを判断しています。

この検査の目的はざっくり分けて2つ。


例えば今のケガが骨折が疑われるようなものなら、

  • このケガが骨折であることを確かめる

  • このケガが骨折でないことを確かめる

このどちらかです。


そしてその検査の持っている、

  • これは骨折だ、と特定する力感度

  • これは骨折じゃない、と否定する力特異度

といいます。
感度と特異度は、その検査がどんな性格なのか、どの程度信じられるのかを数字で表したものです。

感度と特異度で判断すること

ここで最初にでてきた%の問題です。この%はその検査の特定する力、否定する力がどのくらいあてになるかを表しています。

例えばPCR検査の場合。

新型コロナウィルスに対するPCR検査の感度と特異度はまだ確定されていませんが、手に入った情報を平均して、感度が70%、特異度が99%と仮定します。

特異度の高さから「コロナに感染してないよ!」と、感染の可能性を否定する力が強い検査だとわかります。

それに対して感度。
検査の結果が陽性だったとしても、それは本当に新型コロナにかかっている人の7割。
検査結果が陰性でも実はコロナにかかっている人、こういう人が10人中3人いるということになります。


まとめます。今分かっていることを踏まえると、PCR検査は、

  • 結果が陽性だったとき、実は感染していない可能性はほぼ無くて、
  • 結果が陰性だったとき、実は感染しているかもしれない可能性がけっこうある

こういう検査だと言えるかと思います。

感染している人をそこそこ見逃してしまうのはちょっと頼りない感じがしますね。

実際の現場では検査結果が頼りない場合は、他の検査と組み合わせ、より正確な結果が出るように精度を高めていきます。
が、新型コロナウィルスの場合はそれができません。
なぜなら、今のところ現実的にウィルス感染を判断できる検査がPCR検査しかないから。

検査のブラッシュアップ、または新しい検査方法の確立が待たれるところです。

PCRじゃなくてCPRの話

話は少し変わりますが、CPR(Clinical Prediction Rules:臨床予測ルール)という検査の分野があります。
この方法はいくつかの検査や条件を組み合わせて、治療の方針やどの検査をするか決めるとき参考にしてね、というやつです。

私がこの検査方法を知るきっかけになったのがオタワ アンクル ルールというCPRです。
足首の捻挫か骨折かよく分からない時にレントゲンを撮るべきか?の指標に使うものです。
方法は至ってシンプル。

  • 外くるぶしの後側、端から6cm以内を押すと痛い

  • 内くるぶしの後側、端から6cm以内を押すと痛い

  • 外くるぶしの斜め下の骨のでっぱりを押すと痛い

  • 内くるぶしの斜め下の骨のでっぱりを押すと痛い

  • 足を引きずりながらでも4歩連続で歩けない
専門用語はできるだけ使わない方針ですけど曖昧さ回避のため。
腓骨後縁遠位端から6cm,脛骨後縁遠位端から6cm,第5中足骨基部,舟状骨のいずれかの圧痛,連続歩行3歩以下もしくは不可

このどれかに当てはまったら骨折してます、というもの。
感度はなんと驚異の97.6%。すげぇ。

感度がほぼ100%ということは、上の条件を1つも満たさなかったら骨折はまず無いと判断できる検査、と言えます。
このCPRによってレントゲンの撮影回数が減り、医療費削減の効果まであったとか。
日本でも取り入れられないかな。。

ただしこの検査、特異度は39.8%とけして高い数字ではないので、検査は陽性だったけど骨折してませんでした、ってのは結構あります。

CPRからのPCR

いま、帰国者・接触者相談センターが公表しているPCR検査を受けるか受けないか?の基準は、

  • 37.5度以上の発熱など
  • 風邪のような症状が
  • 4日続いたら

PCR検査をしましょう、という流れのようです。

この条件をCPRと考えた時の感度と特異度はとても気になるところ。

熱が出ているのに検査して貰えなかった、という方が待機時間も検査の一部と受け止められるよう、この場合の感度と特異度を公表して欲しいですね。





実際の臨床での判断には有病率、検査前確率、尤度比、カットオフなど、もっと色々な要素が絡んできます。触れるか迷ったのですが、分かりやすく書く自信が全く無かったので触れませんでした。
コロナ関連の数字はいま手に入る情報をもとにしたものなので、今後変わっていく可能性が高いです。参考程度にとどめておいてください。


参考文献
厚生労働省ホームページ
高橋 理:臨床予測ルールClinical prediction rule(CPR)の基本知識と最近の動向:JIM 22巻 6号 (2012年6月)
Lucas M Bachmann, Esther Kolb, Michael T Koller, Johann Steurer, Gerben ter Riet:Accuracy of Ottawa ankle rules to exclude fractures of the ankle and mid-foot: systematic review:bmj.326.7386.417 on 22 February 2003.