使用機材

伊藤超短波 ES-525

オリンピックやW杯などで活躍するトップアスリートや、野球やサッカーのプロ選手達のコンディショニングにも使われる電気治療機器です。 立体動態波と3DMENSの2つのモードを切り替えて使うことができます。

立体動態波

痛みを抑えるには1~200Hz程度の低周波電流が有効なのですが、人間の皮膚は周波数が低ければ低いほど抵抗値が高まる性質があり、痛みを感じてしまうため高出力の電流は流せません。
立体動態波は5000Hz以上の微妙に周波数の異なる電流を3次元的にクロスさせ、皮膚の下で複雑に干渉させて立体的な低周波を作り出すので、痛みを感じること無く高出力の電流を流すことができます。
深層から表層まで広い範囲をカバーでき、鎮痛や筋肉の障害に対して大きな効果を発揮します。

痛みを抑えるメカニズム

電気刺激療法が痛みを抑えるメカニズムは大きく分けて2つあります。

1つ目は電気刺激による痛み信号の抑制です。
下は神経繊維を伝導速度の速さごとに分けた分類と、末端からどんな感覚の信号を脳に届けるかを表した表です。

分類直径(μm)伝導速度(m/s)   機能
12~207~120筋紡錘、腱受容器
5~1230~70触覚、圧覚
2~815~30筋紡錘
1.5~66~301次痛、冷覚
B1~33~15
C0.2~10.5~22次痛、温覚

この表のように末端で受けた刺激は違う神経を通って脳に届き、温度や痛みなどの感覚として認識されます。
ケガをした直後に感じる強い痛みの1次痛、ケガの治りかけの頃の重だるさや、神経痛などのどんよりとした痛みの2次痛もそれぞれAδ、C繊維を通って脊髄に入り脳に届くのですが、この時に触覚、圧覚を伝えるAβ繊維が入力されると脊髄の抑制性介在細胞が興奮し、痛み信号が通る門をぴしゃっと閉めて 触覚、圧覚が優先されて脳に届きます。この身体の反応をゲートコントロール理論といいます。痛いところをさすると痛みが和らぐのはこの仕組みのおかげと言われています。
まとめると、触ったり押したりされる刺激や、電気のビリビリした刺激を与えると痛みを感じづらくなります。

2つ目は身体の中での鎮痛物質の放出です。
電気刺激を身体に与えるとβエンドルフィンやノルアドレナリン、セロトニンなど色々な鎮痛物質が放出されます。よく脳内麻薬などと言われる物質ですね。これらが脳や脊髄にある抑制細胞に働き、痛みをおさえます。
1つ目のゲートコントロール理論は痛みに対し即効性を発揮するのに対し、こちらは持続性に優れていると言われています。 効果は4~5時間。その間は痛みを感じづらい状態を維持します。

以上2つが立体動態波が痛みを抑えるメカニズムです。
また、最近の研究で1次痛が通るAδ繊維、2次痛が通るC繊維を優先的に通る電流の周波数があることが分かってきました。立体動態波は電流の周波数を0.1~200Hzまで細かく設定することができるので、ケガの直後の激しい痛みや神経痛のようなどんよりとした痛みなど、症状に合わせた周波数でより高い効果が期待できます。

3DMENS

何も感じないほどの弱い電流を流し、細胞の代謝を上げることで筋、腱などの損傷の治癒や疲労の回復を早め、痛みを抑える微弱電流刺激 (MENS: Microcurrent Electrical Neuromuscular Stimulation) 。
この電流を3次元的に流し、深層から浅層までより広い範囲をカバーできるように改善したものが3DMENSです。

3DMENSのメカニズム

人間の細胞はアデノシン三リン酸(ATP)という、ミトコンドリアで作られる物質をエネルギーにして働いています。ケガをした時などは回復のためにより多くのATPが使われます。
3DMENSはこのATPの産生量を3~5倍に増やす効果が報告されています。電流量は50μA~1000μAで効果が高く、 1000μA を超えるとATP産生が低下するようです。
どのようなメカニズムでATP産生量が増加するかなのですが、ミトコンドリアに働きかけているのではないか、筋肉の周囲にある筋衛星細胞の増加に関与しているのではないかなど諸説あるのですが、いまのところ明らかにはなっていないようです。

ここからは私個人の意見になってしまうのですが、これ、本当に効果あります。
弱い電流なので筋肉の収縮を起こさせないので、できるだけ患部を安静にしたい新鮮なケガによく使うのですが、ケガはこのくらいの期間で治る、というガイドラインよりおおよそ3日〜1週間はやく治癒します。ケガをしたけど仕事やスポーツにできるだけ早く復帰したい方に強くおすすめします。

伊藤超短波 ES-525で行える電気治療を紹介させていただきました。
急性外傷から神経痛まで、とにかく痛みを抑えることに特化した治療機器です。症状に合わせた設定でご提供いたします。痛みでお悩みのときはご相談ください。保険での施術で使用する際は無料となります。

参考文献:
Melzack R: From the gate to the neuromatrix. Pain, 1999, 6: 570

Chesterton LS,Foster NE,Wright CC,Baxter GD,Barlas P:Effects of TENS frequency, intensity and stimulation site parameter manipulation on pressure pain thresholds in healthy human subjects.Pain,  2003 Nov;106(1-2):73-80.
一般社団法人 日本ペインクリニック学会ホームページ
一般財団法人日本電子治療機学会ホームページ

JM Mercola,DL Kirsch:The Basis for Microcurrent Electrical Therapy in Conventional Medical Practice. Journal of Advancement in medicine, 1995
藤谷 博人:スポーツにおける微弱電流刺激療法,聖マリアンナ医科大学雑誌, Vol45,pp.265-269,2018